EDMにトランスフォームしたゴッドファーザー
#0052
タイズ・ミヒール・ビェルウェスト(Tijs Michiel Verwest)は、ティエスト(Tiësto)の名で知られるオランダの音楽プロデューサー兼DJトラックメイカーで1969年生まれ。
DJ兼トラックメイカーとしてかなり古くから活躍してきた古参にあたり『EDMのゴッドファーザー』とも称されることも。
2000年に サラ・マクラクラン(Sarah McLachlan)をフューチャーした Delerium の “Silence” をリミックスしたトラック “DJ Tiesto In Search Of Sunrise Remix” が全英チャート3位にランクイン。これがティエストにとって最初の国際市場での商業的成功となりトップDJとして一躍その名を知らしめることになる。
2000年代初頭には、他のDJやオープニングアクトなしで6時間ぶっ続けの「ティエスト・ソロ」セットでのイベントを挙行。彼のDJとしての名声はこれによっても大きく知られるようになった。たった一人のDJが大勢の観客を前に単独で長時間プレイするというこのアイデアはとても斬新だった。
2003年5月10日ティエストはアーネムのゲレドームで25,000人を動員。後にティエスト・イン・コンサートと呼ばれるこのイベントはDVD映像パッケージでもリリースさえた。2004年にアルバム“Just Be”をリリースすると夏季アテネオリンピック開会式の選手入場においてオリンピック史上初めてDJとしてのパフォーマンスを披露している。
1990年代半ばからトランスやプログレッシブトランスを軸にトラックを製作してきたティエストだが、徐々にヴォーカルをフューチャーしたコラボが増えていき、前作にあたる『Kaleidoscorpe』ではトランスからより商業的なエレクトロハウス・ダンスポップへと変化。そして2014年にリリースしたこの5thアルバム『A Town Called Paradise』で完全にEDMダンスポップにシフトした。
背景としてあるのは、2010年代前半、ポップミュージックやカントリーポップとEDMの融合が進み、多くのDJ/トラックメイカー(Calvin Harris,David Guetta,ZEDD, Aviciiなどなど)がポップス界隈のヴォーカリスト達とのコラボレーションを推進、そうして製作された楽曲がチャートを賑わせはじめていた。これまでほぼ100%打ち込みでトラックメイクされていた楽曲に変化が見られ、ピアノやアコースティックギターをはじめとする生楽器のオーディオやサンプリングを使ったトラックが楽曲でミックスされることが増えていった時期ということだ。
ポップミュージックにより近づいたことでEDMをはじめとするエレクトロダンスミュージックとポップの垣根はより曖昧となり、これら双方の要素を取り込んだ楽曲が圧倒的にヒットチャートの主流となっていった。
ティエストもトランスからプログレッシブハウスやエレクトロハウスへとシフトするなかでヴォーカリストとのコラボが増えていき、この5thアルバムに至り全曲ヴォーカルをミックスするまでになっている。このアルバムで特徴的なのが男性ヴォーカルがフューチャーされたトラックの多さだろう。
Michel Zitron をフューチャーした M-1. “Red Lights” は 2013年12月13日にアルバムからのリードシングルとしてリリースされ全英シングルチャート6位を記録しスコットランドでは初の1位を獲得した。オーストラリア、デンマーク、ノルウェー、スウェーデンでもトップ10入りしている。ギターのアップストロークのバッキングが印象的なイントロから、クラップを挟んでソロ歌唱になるブレイク、そこからサビメロに入るところがめちゃめちゃぶち上がる典型的EDMポップとなっている。
M-14. “Set Yourself Free” は “Pair of Dice” として2012年にシングルリリースされたトラックをベースに、クルーエラ(Krewella)をフューチャーした Vocal Miix Ver. として収録されている。
“Wasted “ではアメリカのシンガーソングライターのマシュー・コーマを起用。コーマの声は女性のように聴こえる時があるが男性ヴォーカルだ。このトラックはアルバムからの3rdシングルとして2014年4月25日にリリースされて全英シングルチャートで3位を記録してる。特にEDM好きな方でなくてもラジオなどで聴く機会が多いヒット曲ではないだろうか?
管理人がこのアルバムで一番のお気に入りは、M-7. “Last Train” だ。オランダ出身DJのFirebeatzとの共作でヴォーカルにはニュージーランドのレディホーク(Ladyhawke)を起用している。メインテーマのコードが延々と続くがこれがクセになる。
この5thアルバムは2014年6月全英アルバムチャートで初登場22位を記録。アメリカビルボード200では18位、同じくビルボードのダンスエレクトロニックのアルバムチャートでは初登場2位となった。
2016年に日本盤CDがリリースされており、こちらはKASMRやジョン・レジェンド(John Legend)とのコラボ曲など6曲が追加されて20曲入りの大ヴォリュームとなっているので輸入盤よりこちらがオススメ。
Origin : | Breda, Netherland |
Released : | 2014. 6. 13 |
Label : | Universal Music Group |
Producer : | Tiësto and many others |
Studio : |