スタローンが惚れた産業ロックの徒花
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産業ロックというジャンルは色んな意味で誤解を生みやすい。そのまま英訳してしまって”Industrial Rock” としようものなら全く正反対といっていい音楽ジャンルを意味することになってしまうからだ。
英語では主に “Arena Rock” と呼ばれるジャンルに近いものになるかと思う。つまり本来は若者を中心として既存体制への反骨精神や、理解されない大人達への苛立ちや葛藤を音楽的に表現したものが「ロック」だったとすると、それとは対局にある大人達や企業にとってより商業的な尺度(チャートやチケットの売上)で評価される音楽的には「ロック」に近い楽曲やアーティストを表したジャンルだった。
日本ではなぜかこれをアリーナロックとは呼ばず「産業ロック」と呼ぶことで定着したために、冒頭のようなおかしな捻れ現象が発生してしまったのはなんとも皮肉だ。
そんな産業ロックを代表するバンドやアーティストは綺羅星のごとくいるので、今回紹介するのはそんなジャンルにあって徒花のように一瞬の輝きを放った作品を紹介したい。
ROBERT TEPPER のこのアルバムに収録されタイトルトラックともなっている M-1. “No Way Easy Out” はシルベスター・スタローン主演の大人気ボクサー映画シリーズ『ロッキーIV』のテーマ曲でもあった。
ほらもう商業的な匂いがプンプンするでしょう?笑
断っておくがブログ主は産業ロックに全く否定的ではない。むしろ大好物だ。
どうやら当時産業映画(笑)の大スター(いまで云うセレブですな)だったスタローンはテッパーがいたくお気に入りだったらしく、M-2.”Angel of The City”は同じく主演映画の『コブラ』にも採用されている。
その2曲をいきなりアルバム冒頭に配置するあたりも産業ロック的だ。
とは云うもののアルバムはビルボードチャートの144位、最大ヒットシングルM-1も22位だったそうなのでそのあたりが徒花ということになってしまうのか。
ただブログ主はこのM-1.””が大好きで、特に80年代感満載のシンセループからはじまるイントロにどっしりとしたベーストラックが絡みつくあたりや、ゴージャスなギターリフとともに哀愁感たっぷりのヴォーカルで歌いあげるあたり産業ロックの王道をいく名曲だと思っている。
丁寧にミックスされたサウンドプロダクションも最高で、80年代の良さがつまった良品アルバムに仕上がっている。80年代ロックが好きな人には是非効いて欲しい一枚。
Origin : | New Jersey, Unite States ![]() |
Released : | 1986 |
Label : | Scotti brothers Record |
Producer : | Joe Chiccarell |