罪と罰
#0067
オジー・オズボーン Ozzy Osbourne のソロアルバムとなると、やはりランディ・ローズ Randy Rhoads が強烈なデビューを果たした1stアルバム『Bizzard Of OZZ』を推す人がおそらく多いのだろうけど、管理人は、ランディ・ローズ急逝後の後釜を見事に務めたジェイク・E・リー Jake E Lee 時代が好きで、ヘヴィメタル史に残る大名曲 “Bark at the Moon” を収録した3rdアルバム『Bark at the Moon』はもちろんだが、次作4thアルバムにあたる『the Ultimate Sin』(邦題:罪と罰)がもっともお気に入りの一枚になっている。
ジェイク・E・リーというギタリストは、超絶テクニックをいとも簡短そうに激しいステージングと共にプレイしてしまうため、その派手なステージングばかりに目を奪われてしまいテクニックの高さがイマイチ伝わりにくいという希有な存在を示すギターヒーローだった(笑)
ジェイク・E・リー(本名:Jakey Lou Williams)はアメリカ合衆国バージニア州に生まれサンディエゴで育った。日本人である母親の奨めで幼少の頃からクラシックピアノを習うが殆ど興味を示さなかったが、13歳の時に姉が持っていたギターを弾き始めたのがきっかけとなってギタリストへの道を歩む。その際ピアノで学んだ音楽理論はギター上達の役に立ったという。
L.A.メタルの雄 RATT の前身バンドにあたるミッキー・ラットに参加していたが、ラスベガスに移って RATT に改名してほどなく脱退している。その時代にプレイしたジェイクのギターが聴けるのが後にメタル系コンピレーション『Metal Aassarcre』に収録された “Tell The World” でこれは貴重な音源となっている。
(その後ラットのEPに収録された同名曲ではロビンとウォーレンがプレイしている)
ラットを脱退したジェイクはその後ラフ・カット ROUGH CUT に一時期加入しており、この時のパフォーマンスを観たロニー・ジェームズ・ディオが自身のソロプロジェクトにジェイクを誘ったが、このコラボレーションはうまくいかなかったようだ。
一方ランディ・ローズの急逝後、バーニー・トーメ(ex. Gillan)やナイト・レンジャーのブラッド・ギルスのサポートでなんとかツアーを乗り切ったオジー・オズボーンは、自身のバンドのパーマネントギタリストとしてドッケンのジョージ・リンチかジェイクかで迷った末、ジェイクを抜擢することになった。
こうして当時Bassを務めていたボブ・デイズレー Bob Daisley とともにジェイクはニューアルバムの作曲を始め、1983年にアルバム『Bark at the Moon』をレコーディングした。
シングルカットされた “Bark at the Moon” はMTVやラジオで定期的にオンエアされ、現在までこのアルバムは全米で300万枚を売り上げた。そしてジェイクはアルバムのかなりの部分を作曲として参加していたが、オズボーンの妻でありマネージャーのシャロン・オズボーンによって作曲と出版の権利をだまし取られたと言われている。ジェイクによると、彼が作曲しスタジオで自分音パートを録音し終えた後で、アルバムに関するいかなる著作権も出版権も主張しないと書かれた契約書を提示され、そこにはこの件について公の場で話すことはできないとも書かれていた。彼がこの契約書にサインしたのは法的な代理人がいなかったからで、もし彼が拒否すればシャロンが彼を解雇して別のギタリストに彼のパートを再レコーディングさせると脅したからだと主張している。
またこの3rdアルバムで大半のギタートラックを収録済みだったジェイクが、M-4. “Rock’n’Roll Revel” のトラック収録でようやく自分が探し求めていたセッティングが理想的に決まったらしく、なんとか収録済みの全トラックもこのセッティングで再録させてくれるよう懇願したが聞き入れなかったというエピソードもある。
1985年になり薬物乱用治療を受けていたオズボーンが現場に復帰。彼の復帰を待っていたジェイクからは大量の新曲がオズボーンに贈られ、オズボーンはジェイクの新曲の量と質にとても満足して実際その多くが1986年のアルバム『The Ultimate Sin』で使われることになったようだ。ただ今回はジェイクの作曲クレジットと出版権利を保証する契約書が用意されるまで一切何も提供しないと拒否してしたという(笑)
1986年5月にプラチナ・ステータスを獲得したこのアルバムは、1994年10月にはダブル・プラチナ・ステータスを獲得した[5]。リーとオズボーンは再び大規模なツアーを行い、この時はベースにフィル・スーザン、キーボードにジョン・シンクレア、ドラムにランディ・カスティロを迎えた。1986年4月1日、ミズーリ州カンザス・シティでのコンサートが撮影され、ホームビデオ『The Ultimate Ozzy』として同年末にリリースされた。
歌詞の大半は前任Bassのデイズリーが書いていたが、この4thアルバム『the Ultimate Sin』のレコーディングには新たにBassプレイヤーとして加入したフィル・スーザンと、ランディ・カスティロがDrumsとして参加することになった。
特に新メンバーのフィル・スーザン Phil Soussan は、その後モトリー・クルーのヴィンス・ニール Vince Neil やTOTOとも共作するなど作曲才能もプロデュース能力もあるベーシストで、アルバムタイトル曲で大ヒットシングルともなった M-10. “Shot In The Dark” を共作している。
アルバムはオジーにとって最高チャートのヒットとなり、1987年に開催したアルバムツアーも大成功を収めることになったが、ツアー終了後シャロンからの電話でジェイクはオズボーンバンドを突然解雇された。
この新ギターヒーロー解雇について、オズボーン自身は個人的な問題は全くなかったと述べているが、ドラマーのランディ・カスティロがジェイクに「反感を抱き始めた」ためとも主張している。ジェイク自身はフィル・スーザンが自分をバンドの主要なソングライターにするよう説得しようとするためジェイクの曲を使うことをオジーに思いとどまらせようとしていたと語っており、スーサンは「自分を解雇させるのに一役買った」と述べている。結果的にジェイクもスーサンもこのアルバムを最後にオズボーンの元を離れることになったのだが、当時のヘヴィメタル興隆におけるマネーゲームと相まって色々あったことは確かなようだ。
こうした舞台裏のドロドロとは裏腹にアルバムの出来は素晴らしいもので、特に楽曲群については文句がない。(プロダクションについては不満が残るが)
ミドルテンポの印象的なドラムパートではじまるアルバムタイトルの1曲目はイントロからジェイクのリフが曲を支配するが、中盤ソロ直前のスライドなど、とにかく小ネタがあちこちに散りばめられている。
M-2. “Secret Looser” はノリのいいロックンロールで収録曲のなかでも好きな1曲で聴いていて楽しくなるが、これもジェイクのリフと演出が効果的に盛り上げているナンバーのひとつだ。
M-6. “Lightning Strike” をプレイするジェイクは当時愛用していた有名な白黒ツートンのSSHストラトタイプともうひとつスカイブルのギターがあったがこのパフォーマンス映像で観ることができる。特に2分50秒辺りからのギターソロのプレイは圧巻。
M-7. “Killer of Giants” は元々このアルバムのタイトル曲となる予定だったが最終的に変更された。序盤に美しいギターアルペジオとオジーの哀愁たっぷりのヴォーカルが聴ける。中盤のソロが終わると徐々にテンポと激しさを増していく壮大な展開をみせるナンバーで聴き応えたっぷりだ。
最後のトラック M-9. “Shot In The Dark” は、「暗闇でドッキリ」という間の抜けた邦題タイトルからは想像もつかないようなダークで美しい旋律のヒットチューンでアルバムを締めくくるに相応しくオジーのヴォーカルがとても素晴らしく、ジェイクのハーモニクス奏法が効果的に演出している。
ただレコードとオリジナルCD盤が4分23秒だったのに対して、リマスター盤CD(1995)やSpotify配信バージョンなどでは4分16秒となっており一部の小説が欠落している。その理由は不明。
興味がある方は是非これらを入手して聴き比べてみて欲しい。管理人はLPレコードでもっぱら聴いていたのでこの事実には気がついていなかった。
こうしてオズボーンバンドで名を馳せたジェイク・E・リーは、脱退後レイ・ギラン Ray Gillen (ex. Black Sabbath)やエリック・シンガー Eric Singer (ex. KISS)らと共にバッドランズ BADLANDS を結成。
デビューアルバム『BADLANDS』ではオズボーン時代とはガラリと雰囲気を変えた渋いブルース色が濃いハードロックを聴かせてくれている。当時まだまだロックの深みが分かっていない自分にとってギターヒーローとしてのジェイク・E・リーを期待していたため正直がっかりした一枚だった。どうやら世間の評価も同じだったらく(笑)このバンドはメンバーチェンジなどを経て3枚のアルバムを残したがいまいちブレイクしなかった。
ただこの『BADLANDS』のCDはずっと持ち続けていて、管理人が年を重ねるに連れてその良さが分かってきたらしく、いまではかなりお気に入りの一枚になっている。いずれこのブログでも紹介したい。
Origin : | the United States |
Released : | 1986. 2. 22 |
Label : | Columbia Records (CBS Associates), Epic |
Producer : | Ron Nevison |
Studio : | Townhouse Studios, AIR Studios (London), Studio Davout (Paris) |