ロイヤル・ストレート・スラッシュの砦
#0011
大英帝国といえばハードロック、ヘヴィメタルの伝統を育みNWOBHMのまさに聖地でもあった。
何を今更という話だが、ことスラッシュメタルとなると、、、、
アメリカは勿論のことドイツや他ヨーロッパ諸国に比べてもやや寂しい状況に見えるのだが。
確かにスラッシュメタル誕生に大きな影響を与えた VENOM はイギリスのバンドだし、スラッシュメタルバンドを数多くプロデュースしてきたことでも名高い Andy Sneap もイギリス出身で、彼がギタリストとして活躍する SABBAT や EVILE という有望なバンドも登場してきていた。
ただメタル宗主国たることを鑑みると、ややスラッシュメタルにおいては些か後塵を拝しているという印象は拭いきれない。
しかしそんな英国産スラッシュメタル陣営にあって、孤軍奮闘その砦の一角を守ってきたと云えるのがこの ONSLAUGHT というバンドだろう。
彼等も多くのスラッシュメタルバンドと同様に、80年代に新たなメタルシーンの発芽に呼応するようにバンド活動を開始して、いくつかの素晴らしいスラッシュメタルなアルバムを世に送り出してきたが、やがて他のスラッシュメタルバンドと同様にシーンの閉塞感を迎えた90年代に至り迷走を経験して、一度バンド解散という憂き目に遭うことになる。
そして2000年代に入った頃、先の Andy Sneap のもとで4枚目のアルバムを製作。バンドは見事な復活を果たして、2011年に至ってこの5thアルバム『Sounds Of Violence』を世に放ってきた。
そのアートワークは、デビルスターのペンタグラムと鷲章をモチーフにしながらも現代的に仕上げており、今作の作品内容を象徴しているかのようだ。

荘厳なドラムロールからゆっくり幕開けする本作だが、冒頭一曲目からガツンと聴かせてくる。そしてタイトルチューンでは謂わばロイヤル・ストレート・スラッシュの王道といっても良いようなパフォーマンスを魅せる。
しかしアルバム全体を通して聴いていくと、スラッシュメタルらしい疾走感に溢れた曲もありつつも、暴走一辺倒とはならず、ミドルテンポやモダンなヘヴィネスを彷彿させるギタープレイも巧みに配合させながら、アルバム全体でグイグイと聴き手を惹きつけてくる。
特にサイ・キーラのヴォーカルは”デスラッシュ”な唱法でこれら楽曲のバリエーションを歌い分けている。それをスティーブ・グライスのタイトなドラムとナイジ・ロケットの多彩なギターリフがあって、存分にバンドの魅力を発散させているのだ。
伝統の地でスラッシュメタルのオリジナルシーンから生まれたベテランバンドらしく、ツボを押さえた余裕さえ感じさせるアルバムだが、だからといって退屈な予定調和や守勢といったものは感じられず、むしろ騎虎の勢いでもってブルータルにタイトル通りの「暴音」で圧倒してくるのがメタルヘッズには嬉しいところだ。
なお本作に収録されていたボーナストラックで、ドイツジャーマンスラッシュ三羽烏の一角 SODOM のエンジェルリッパーと共に、本家からフィル・キャンベルを迎えて同胞 MORTERHEAD の名曲 “Bomber” を、より疾走感あふれるカバーで演奏しているのも聴きどころのひとつになっている。
Origin : | United Kingdom ![]() |
Released : | 2011. 1. 28 |
Label : | AFM Records |
Producer : | Jacob Hansen |