ゴシックの境界線
#0001
オランダでの国民的人気は云うに及ばず、世界中のゴシックメタルファンそして広くメタルの枠を超えた多くの音楽ファンから絶大な支持を得るまでに成長した WITHIN TEMPTATION
シャロン・デン・アデルの美貌と艶やかなヴォーカル、そしてロバート・ウェスターホルトの美しい楽曲が過去数年のちょっとしたゴシックメタル・ムーブメントにも乗って当時一気に人気を加速させていた印象がある。
しかし潮流に乗っただけではなく彼等がアルバムを発表するたびに自らその音楽性を着実に進化させてきたことも間違いない。
学生時代から活動を始めていた彼等だが、シャロンはこの作品発表当時すでに36歳。
その少し前に二人目の子供を無事出産してから満を持して発表したのがこの5thアルバム『The Unforgiven』であり、彼等にとって初のコンセプト・アルバムでもあった。

当時は新作はコンセプト・アルバム?と聞いて少し不安になっていたが、シングルカットMV “Shot In The Dark” を観てそんな不安は払拭された。これまで以上にキャッチーなフレーズを備えた曲でシャロンの艶っぽくも迫力ある唄いっぷりも健在だった。ただゴシックメタル色やシンフォニックな要素はかなり後退した印象もある。
アルバム収録曲のなかにはメタルとはちょっと言えない曲もあった。こうしたオルタナティヴな方向性に対して従来からのファンはどういう反応を示したのだろう。
死者を甦らせる不思議な力を持つ女性を主人公にしたストーリーコンセプトはコミックと連動していて、その世界観とMVなどのビジュアルイメージではダークな雰囲気を保っているものの、収録されている楽曲はどれもかなりキャッチ-に仕上がっている。
メロディアスなロックが好きなファンや雑食性メタルファンであった自分などには、これらの楽曲の良さもあって高い評価を得ただろうしバンドとして今後のマーケット拡大を考えると当然の選択ともいえそうだが、当初評価していたコアなゴシックメタルファンからはそっぽを向かれたかもしれない。
アルバム全体を通して改めてそのサウンド面を聴いてみると、キーボードを巧みに取り入れつつ、ギターやドラムスはこの作品くらいからかなり後退した音作りになっている印象がある。
そして12年後に改めて聴いてもかなり完成度が高い作品だったのだと感じる。実際この3年後の2014年に発表したオリジナルアルバム『Hydra』は自分にとっても最高に好きなアルバムになっている。
このアルバムは、彼等にとってそんなゴシックメタルの境界線に立っていた作品だと思う。
Origin : | Netherlands ![]() |
Released : | 2011.3.29 |
Label : | Dragnet/Sony (Eu), Roadrunner (US,Jpn) |
Producer : | Daniel Gibson, Stefan Helleblad |