ある日森の中、メタルバンドに出会うかも
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フォークメタルのガチ勢 ELUVEITIE(エルベイティ)というスイス出身の9人組。
それぞれのメンバーがアイリッシュフルートやティンホイッスル、フィドル(バイオリンのこと。奏法や演目の違いによるチューニングの違いなどによりこう呼ばれる)、バグパイプ、マンドラ等々、、、多岐に渡るパートを複数こなすようだ。
欧州圏の各地にはこういった民族楽器をも織り込んだ、いわゆる「フォークメタル」とカテゴライズされるバンドがいまでは数多く存在するが、その代表的存在でフォーク(民謡)色が濃いバンドのひとつがこの ELUVELITIE だろう。
バンド名はガリア語で(古代ローマ時代の欧州にあったケルト語の一派。ゴール語とも)「スイスに住まいしケルト人」といった意味らしい。バンドロゴもケルト文字風に装飾されている。
とはいえ、ユニークで奇抜な楽器構成に奇をてらったキワモノというバンドではなく、メロディックデスメタルを軸にヴァイキングメタルの勇壮さ、ケルトミュージックの郷愁などをうまく取り入れた楽曲をプレイしており、その完成度も高い。
そんな彼らの記念すべき 1stフルアルバムがFear Darkレービルから2006年にリリースされた『Spirit』はサウンドホリックから日本盤も発売されたが現在は廃盤となっており、Spotifyなどでも配信されていないため中古CDなどを入手するしかないようだ。
バンドは新たなメンバーにAnna Murphy(Hurdy-Gurdyという手回しの弦楽器を演奏する女性Vo.)を迎えて翌2017年にはドイツ発祥の大手メタル系レーベルNuclear Blastと契約を交わす。そのNuclear Blast移籍第1弾としてリリースしたのが2008年の2ndアルバム『Slania』となる。
HMV&BOOKS online ELVEITIE – Slaniaこのアルバムは多くのメタルファンや専門誌、批評家から大変高い評価得ることになり、彼等をフォークメタルの代表格へと押し上げた。いまでもその位置づけは変わっておらず、特にM-3. “Inis Mona” はYouTubeのPV動画は3,300万回を超える再生数となっており、このフォークメタルというマイナージャンルにおける代表楽曲とも云える存在になっている。
また彼等が優れたライブバンドであることも2016年のWacken Open Airのパフォーマンス映像を見ればよくわかる。実際に多くの楽器を操る様は圧巻。
このアルバムは2008年のMetal Campツアーのライブ音源を追加収録したTour Edition盤がジャケットアートの女の子が座り込んでいるような異なる写真でも発売されている。さらに面白いのが2018年に発売された10周年記念盤では成長した女性(本人だろうか)が同じ構図で立つデザインとなっている。
HVM&BOOKS online ELVEITIE – Slana (10th Anniversary Edition)このアルバムをヘッドフォンで聴いていると、地の底から沸き上がるような Chrigel Glanzmann(クリゲル=グランツマン)のグロウルが響くなか、しかしそれがやがては森の中の佇んでいるかのような閑けさと、木々の香りや岩肌の冷たささえもを感じられるような心地よい錯覚に陥る。
万人にはオススメできないかもしれないが、ジャンルに拘らず音楽の楽しさを享受できる人なら新鮮な驚きと楽しさを味わえる作品だと思う。是非一度聴いてみて欲しい一枚。
Origin : | Switzerland |
Released : | 2008. 2. 15 |
Label : | Nuclear Blast Records |
Producer : | Jens Bogren |
Studio : | Fascination Street Studios (Örebro, Sweden) |