カナダから舞い降りた鷲
#0023
Triumph(トライアンフ)は70年代から80年にかけて活躍したカナダのベテランロックバンドで、RUSH と共にカナダ産ロックの可能性を世界に広く知らしめた。バンドは Rik Emmett (Gt./Vo.) を中心に、Mike Levine (Bass/Keyboard),Gill Moore (Drums/Vo.) のスリーピース構成で80年代の主な作品をこのラインナップで製作した。
次第にプログレ路線に傾倒していくことになるエメットがソロプロジェクトのために1989年でバンドを脱退したあとも、残った二人はバンドを継続することを試みるが 1993年に無期限活動停止となった。2000年代になってカナダにおける長年の活動が評価されロックバンドに贈られる様々な賞やカナダのロック殿堂入りなどを果たしており、つい最近も彼等のドキュメンタリー映画が公開されたりしている。
さて、そんな彼等がちょうどアメリカに打って出た時の話。
前作にあたる5th『Allied Forces』(邦題:メタル同盟)を 1981 にリリースすると、バンドはすかさず9ヶ月にわたるツアーを敢行する。
同じ頃 LOVERBOY が全米ヒットチャートを賑わせるなど、RCAレコードもカナディアンロックの台頭を予感したのか TRIUMPH ツアーをサポートするように全米のレコードショップで大々的なプロモーションを展開している。この狙いは見事にあたり、このアルバムは全米チャートTop20圏内に入るセールスとなった。
そうしたなか満を持して製作したのがこの6thアルバム『Never Surrender』でカナダでは1982年に(US盤発売は1983年1月)リリースする。バンドとの共同プロデュースとして AC/DC や J Giles Band, Billy Squaire との作業で知られる David Thoener を起用している。

中心メンバーの リック・エメット (Gt.) の巧みなギタープレイを全面に押し出した明快なハードロックを展開するが、それ一辺倒ではなく12弦ギターを用いたフレーズやアコースティックギターで幕が開けるナンバーなど多彩でオーセンティックな色合いも醸し出している。
リック・エメットが傾倒する”ポピュリズム”(日本や欧州よりも肯定的な意味)を映し出す政治的なメッセージがいくつかの歌詞には込められていたり、冒頭幕開けの M-1. “Too Much Thinking” にはロナルド・レーガン大統領の演説がサンプリングされるなど、そういった意味合いでもこのアルバムがアメリカ市場を意識した作品であったのは間違いない。
B面のアルバムタイトル曲 M-7. ”Never Surrender” は複雑な曲展開をみせる長尺ナンバー(6’41”)だし、A面 M-5. “Battle City” のギターリフなど随所に Led Zeppelin へのオマージュも感じさせる。
しかしアルバム全編は明快なハードロック路線でまとまっていて、カナディアンロックバンドらしくロックンロールへの深いリスペクトと憧れがプレイに現れていて充実した仕上がりを聴かせてくれる。
このアルバムはCDではなくレコードで所有しているが、いまだに時折ターンテーブルに乗せて聴きたくなる1枚。
Origin : | Canada (Mississauga, Ontario) ![]() |
Released : | 1982 (Canada), 1983 .1 (US) |
Label : | Attic Records |
Producer : | Triumph , David Thoener |
Studio : | Metalworks Studio (Mississauga, Ontario) |