屋根裏部屋からの贈り物たち
#0024
中学1年の頃だろうか、ビリー・ジョエルを初めて聴いた時、ピアノってこんなにもポップな演奏ができるのだと感動した記憶がある。それほど彼の弾けるプレイは魅力的でピアノが打楽器であることも知識としてではなく彼のプレイを通じてこそ実感できるものがあった。
5枚目のスタジオアルバム『The Stranger』(1977)でソロアーティストとして歴史的にも圧倒的な成功を収めた彼が、人気絶頂だった 1980年の全米ツアーからピックアップしてライブアルバムとしてまとめたのがこの1981年に発売された『Songs in the Attic』だった。
そしてその選曲方法には彼なりのこだわりがあったことがアルバムのライナーノーツでも語られており、敢えて初期4枚のアルバムに絞って選曲することで、大ブレイクを果たした『The Stranger』以降に彼の作品を知るようになったファンに向けて初期の彼の作品を紹介したのだと書いている。
初期作品のほとんどはセッション・ミュージシャンが演奏しており、ジョエルは歌いながらピアノ,キーボード,ハーモニカといったパートを演奏していた。しかし1970年代後半以降のツアーでは常にある程度一貫したツアーメンバーそしてレコーディングメンバーをバンドとして持っていて、そうした自分のバンドが演奏する昔の自分の曲を紹介したかったそうだ。
実際このライブアルバムではジョエル自身がその魅力を存分に発揮するだけでなく、彼のバンドミュージシャン達による素晴らしいパフォーマンスが聴けるアルバムになっており、聴いているうちにこれがライブアルバムであることを忘れてしまうくらいだ。
特にドラムスの Liberty DeVitto と サクソフォーンの Richie Cannata の二人が素晴らしく、その二人のプレイは M-7. “Say Goodbye to Hollywood” で最も堪能できるのではなかろうか。
そうしたこともあってか、ライブアルバムとしては異例とも云えるシングルカットがこのアルバムからリリースされている。 先の ”Say Goodbye to Hollywood” は全米ビルボードHot100で最高17位を記録し、続くM-5. ”She’s Got a Way” も23位まで上昇している。またあの『ピアノマン』のB面にも収録されていた “You Are My Home” もこのライブアルバムからシングルとしてリリースされた。さらに日本では 「ロス・アンジェレノス」も日本盤シングルとして発売されている。
実際、これらの曲はこのアルバムを通して改めて多くの音楽ファンに知られることになり、その後も長く彼の代表曲として親しまれることになったし、その後のベスト盤でもこのアルバムのライブテイクが採用されている。
彼の選曲コンセプトはジャケットにも現れていて、屋根部屋に置かれた古い楽譜が懐中電灯に照らし出されている、という印象的なアートワークになっている。
HMV&BOOKS online BILLY JOEL – Songs In The Attic手前味噌だがこのブログも引越で大量に出てきた段ボールのCDやレコードを回顧するというコンセプトで、サブタイトル「My Favorite Songs In The Strage Boxes」はこのアルバムのタイトルをもじったものになっている。音楽配信サービスは画期的で素晴らしいものだが、たまに古いCDやレコードを改めて聴いてみると当時とはまた違った新鮮な感動を呼び起こしてくれるかも?
Origin : | Long Island, New York, United States |
Released : | 1981. 9. 14 |
Label : | Columbia Records |
Producer : | Phil Ramone |
Performance : | 1980 NYC Madison Square Garden 他 |