イェーテボリは忘却の彼方か
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イン・フレイムス(IN FLAMES) は、かつてイェーテボリ(Gothenburg;日本語訳によってはヨーテボリ)スタイルの継承者として Swedish Death Metal における代表的なバンドだった。しかしそんな彼等も6枚目のスタジオアルバム『Reroute to Remain』(2002)でその音楽的スタイルを大きく変えることを試みることになり、その後はよりオルタナティヴなメタルに移行した。それ以降、昔からのファンからはそっぽを向かれてしまった感は否めないが結果的にはこのことは彼等のアメリカ進出に貢献。より広いファン層を取り込んでそれなりに順調なセールスももたらしてはいる。
ただやはりオールドファンにとってこの変化は寂しい思いがあったのだ。
もともと AT THE GATE がもたらした、メランコリックでメロディアスな要素をデスメタルと融合させるという手法は、瞬く間にスウェーデンや同じイェーテボリのメタルシーンに大きな影響を与え、このスタイルは彼等の出身地であり、スウェーデン第2の都市でメタルシーンがとても活発だった地名をとって「イェーテボリ(サウンド)スタイル」と呼ばれるまでになっていった。
そんなイェーテボリでイェスパー・ストラムブラード(Jesper Strömblad ; Gt.,Key, Ds)によって1990年に結成されたのがこの IN FLAMES だった。そして当然の帰結のように彼等もまたイェーテボリサウンドを代表するような楽曲・作品を発表することになる。結成当初からしばらくはメンバーが定まらず出入りが激しいバンドだったが、この4thアルバム『Colony』から約12年間は安定したラインナップで活動を広げていくことになる。
そして、この4thアルバム『Colony』こそ彼等の、イェーテボリスタイルにおけるひとつの到達点であり代表作のひとつと云えるだろう。
HMV&BOOKS online IN FLAMES – Colonyセールス的には次作5th『Clayman』が上回っており、そのことは彼等がアメリカ進出を意識するきっかけにはなるのだが、管理人はこの90年代最後の作品『Colony』にこそ、よりメロディック・デスメタルらしいブルータルでメランコリックな美しさを強く感じる。
その理由のひとつはメインヴォーカルのアンダース・フリーデン(Anders Fridén)の歌唱法にある。4thでは基本的にグロウル(いわゆるデスヴォイス)でスクリーミングする歌唱で一貫している。
M-2. “Ordinary Story” 導入部のバラードパートやコーラスパートでウイスパーに近いクリーンで唄っている箇所があるものの、この曲でも他パートは同じスタイルを通している。
一方の5thではブルータル度を増した楽曲もあるがクリーンヴォーカルを織り交ぜるなどの指向の変化がみてとれる。マンネリにならないよう彼等なりに創意工夫がみられる素晴らしい作品であるのは間違いないのだが管理人の好みはと云うと、こちらの4thということになる。
なおこのM-2. と M-4. “Colony” では、はじめて drop A# のダウンチューニングを採用しており、思わずヘッドバンギングしたくなる直情的なリフと相まって迫力あるナンバーに仕上がっている。
対象的に M-5. “Zombie Inc.” のイントロなどでみられるような叙情的なギターリックやシンセサイザーの使い方はまさにメロディック・デスメタルの真骨頂であり、当時の彼等のスタイルを象徴していた。
また M-6. “Pallar Anders Visa” というインストナンバーは「りんご泥棒のアンダース」というような意味のタイトルをもつ、スウェーデンの旧く美しい民謡をアコースティックギターでカバーしたものだ。またM-9. と M-10. はいずれも彼等の1stアルバム収録曲からのリメイクレコーディングとなっている。
このアルバムで少し物議を醸したのが M-11. “The New Word” という曲のタイトルで、オリジナル盤裏表紙のトラックリストやブックレットの歌詞では「The New Word」となっていたのが、ブックレットの曲タイトルが 「The New World」となっていた。これならまぁ誤植かなで済むところだったが、さらに悪いことに2004年盤では、そののトラックリストや公式ウェブサイト表記までもが「The New World」となってしまっていたことで余計な憶測や議論が発生してしまったようだ。
ただサビの歌詞 ‘In my hand is a new word / but the word is, still without a body’ から鑑みてその意味を汲み取る限り「The New Word」が正解なのだろう。
さてアルバムの最後を飾る M-12 “Man Made God” は裏拍で跳ねるギターリフが心地よく疾走し、アコースティックを交えた美しいギターが聴けるインストゥルメンタルンバーで大好きな1曲だ。
ただただカッコイイ!
彼等のこのスタイルが大好きだっただけに、正直なところその後のオルタナティヴへの変遷は残念でならなかった。ただ最近の彼等のアルバムを聴いてはいないので、また近々何か聴いたら改めて感想を残してみようとは思っている。
Origin : | Gothenburg, Sweden |
Released : | 1999. 5. 31 (world wide), 5. 21(JPN) |
Label : | Nuclear Blust Records |
Producer : | Fredrik Nordström |
Studio : | Studio Fredman (Gothenburg, Sweden; Nordström owned) |