新興国ブラジルの先兵
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現在でこそ南米ブラジルといえばメタル界隈でも優良バンドの宝庫であり、特にメロディアスなパワーメタルやスピードメタルの一大産地となっているが、世界中のメタルファンの目を南米の地に向けさせるキッカケとなったのは、ANGRAが1993年に発表したこのデビューアルバムではなかろうか。
ブックオフ ANGRA – Angels Cry(中古)まだ欧米がその中心のメタル界隈にあって、いわゆるクサメロと云われる訴求力の高いメロディーとその高い演奏技術を武器に世界に通用する名盤を作り出した。
VIPER を脱退したアンドレ・マトスが、バンドの中心メンバーとなるラファエル・ビッテンコートや当時はまだジャズギタリストでもあったキコ・ルーレイロ(現在はMEGADETH)を誘って結成したのがANGRAであった。
当時はジャーマンパワーメタルとクラシックの融合というふれ込みでデビューしたようだ。実際のところクラシックの名曲からのフレーズをいくつかアルバムや曲の中に取り入れたりアレンジしているに過ぎず「融合」というには些か大袈裟だと思っている。
しかし一方でケイト・ブッシユの名曲”Wuthering Heights”のカバーを収録するなど多彩な音楽性を取り入れようとしたことは確かで、特にそのラテン系リズムを発露した独自性は既存のジャーマンパワーメタルとは一線を画したパワーメタルの新境地をもってブラジルという新たなメタル布教聖地を確立したことは間違いない。
またアンドレ・マトスの天にも登るばかりのハイトーン・ヴォイスと二人の卓越したギターテクニックで美旋律をふんだんに繰り出す完成度の高い楽曲がこのアルバム最大の魅力でもある。
その後、ANGRAはラテン色を強めたりしながらその世界観を拡張していくが、マトスが 3rdアルバム製作後にバンドを脱退してしまう。
しかし新たなヴォーカリストとなったエドゥ・ファラスキーを得て見事に復活を果たしており、その間に無数の ANGRA フォロワーが南米中に拡がっていくことになる。
振り返ってこのアルバムがターニングポイントであり名盤と云われる所以となったのは確かだ。
Origin : | Brazil |
Released : | 1993.11.3 |
Label : | Eldorado, Victor, Polydor |
Produced : | Charlie Bauerfeind, Sascha Paeth |