遅れてきた超絶技巧派変態スラッシャー
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アナイアレイター(Annihilator)はカナダ出身の超絶技巧派の変態プレイで有名なギタリスト、ジェフ・ウォーターズ(Jeff Waters)が率いる彼のプロジェクトバンドといっていいだろう。
2000年代にデイヴ・パッデン(Dave Padden)が12年ほど Vo./Rythm Gt. を続けて務めていた時期はあるもの、バンドキャリアを通じてこれまで殆どのメンバーが固定されたことはなく、とにかくジェフ・ウォーターズがそこでギターを弾いていればよい、というバンドなのだ。
アナイアレイターはオタワで結成してからデビューまでに5年ほどかかっているが Roadrunner Records とサインを交わし1st『Alice in Hell』をリリースする頃には当初5人いたメンバーから既に2人が脱退。レコーディングにはジェフの他に、リード Vo. を務めたランディ・ランペイジ(Randy Rampage)と Drums のレイ・ハートマン(Ray Hartmann)およびサポートメンバ-だけが参加した。
そこでジェフは M-1. “Crystal Ann” を除く全曲全てを手がけたうえで、リードギター、リズムギター、ベースギター、バッキングVo.の他にプロデュースとミキシングまでこなしている。
なおこのアルバムは同年1998年9月にリイシュー盤として再発された際に、ボートラとしたデモトラック3曲収録されていて、そこではジェフのリードヴォーカルも少し聴くことができる。

このボートラ全てがカリカリのスラッシュメタルでデモ音質であっても聴き応え十分となっている。なおそのうちの1曲 “Powerdrain “は、その後 1999年にリリースされたアルバム『Criteria for a Black Widow』に収録された M-9. “Sonic Homicide “の元ネタとなっている。
タイトルトラック M-2. ”Alice in Hell” は、スラッシュメタルらしい疾走感に、緩急をつけるようにジャキジャキと刻まれるリフ、ジェフの金切り声コーラスとランページのリードヴォーカルを巧みに織り交ぜ後半の素晴らしいギターソロへと流れ込んでいく。
MVでは当時のメンバーによる演奏シーンで構成されているが、その後、彼等のライブで鉄板となったこの曲を2015年の Wacken:O.A.ではジェフがギタープレイしながら全て唄っている、、、
M-2. ”W.T.Y.D.” (Welcome to Your Death のこと)、そして M-3. ”Wicked Mystic” ともにバンドの鉄板セットとなっていて、どちらもスラッシュメタルの気持ちよさを存分に堪能できる。とにかくこのアルバムでは何も考えずひたすらヘッドバンギングすればよいのだ。そしてその中に必ずキラリと光るジェフのギタープレイの片鱗を感じ取ることができる。
とりわけ M-7. “Schizos (Are Never Alone(, Pts. I & II” のスピードは圧巻で、これぞスラッシュメタルという1曲だ。
こうして産みの苦しみのなか自身の才能で扉をこじ開けたカナダのスラッシャーは、1980年代初頭から台頭したメタリカやメガデスそしてテスタメントといった所謂ベイエリアスラッシュらのムーブメントに遅れてやってきた。そのため1980年代後半から1990年代前半におけるスラッシュメタルの「セカンド・ウェーブ」として現在でも高い評価を受けいる。
Origin : | Otawa, Canada ![]() |
Released : | 1989. 4. 17 |
Label : | Roadrunner Records |
Producer : | Jeff Waters |
Studio : | Live West Productions Fiasco Bros. Studios, New Westminster, Canada |