原体験となった希代のロックショー
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言わずと知れたオーストラリア出身のモンスターバンドである。全世界で2億4000万枚以上のアルバムセールスを誇る。
そして その代表作となると、やはり1980年発表の 6thアルバム『Back In Black』というだろう。何せこのアルバムは全世界で5300万枚を売り上げて 25 x プラチナムを獲得。マイケル・ジャクソンの『スリラー』に次いで最も売れたアルバムなのだから。
70年代初期のデビューアルバムから個性的なヴォーカルと楽曲制作でバンドの活動を支えてきたボン・スコット(Bon Scott)の急逝に直面したバンドは、80年年代を前に一時は解散も考えていたようだが、後任ヴォーカリストとしてブライアン・ジョンソン(Brian Johnson)を迎え活動を継続。皮肉にもフロントマンが変わってリリースしたアルバムが世界中で大ブレイクすることになる。
しかし管理人にとって最も思い入れがあるのは、次作となる 7thアルバム『For Those About to Rock (We Salute You)』(邦題:悪魔の招待状)のほうだ。
漆黒の前作に対比するかのように光沢のある金色のジャケットの中央に野戦砲が鎮座している。
HMV&BOOKS online AC/DC – For Those About to Rock (We Salute You)前作で大ヒットを飛ばしたバンドは間髪入れることなく本作を翌年1981年11月にリリース。バンドにとってまさに脂が乗り切ったこのタイミングで発売したこのアルバムは、ついにビルボードHOT200で全米アルバムチャートの1位を獲得した。そしてその勲章を引っ提げてバンドは1982年6月に再度の来日を果たす。
このジャパンツアーにおけるAC/DC京都公演が、当時高校1年だった管理人にとっては正真正銘初めてのライブ体験だった。
アルバムジャケットにある野戦砲が象徴するようにオープニングのタイトル曲では大砲をぶっ放す音がSEとして収録されており、そのライブステージでも巨大な大砲からスポンジのカラーボールが客席に向かって放たれるという凝った演出だった。
マーシャル直アンの轟音をかき鳴らしながら、半ズボン姿でワインレッドのSGを抱えながらステージを駆け回るアンガス・ヤング(Angus Young)、対照的にキャビネットの前から一歩も動かずネックフロントのピックアップが外れたグレッチギターで只管にリフを刻み続けるマルコム・ヤング(Malcolm Young)、そしてベレー帽がトレードマークのブライアンが地獄の底から湧き出てくるような濁声で煽る。
昭和生まれの田舎高校生にとって、これほど興奮する衝撃的な体験はなかっただろう。
すでに中学生に上がった頃から、洋楽・ロック・メタルと順調に扉を開き、既にどっぷりだったガキがこんなライブを体験してしまったら、死ぬまでロックを聴き続けることになるのは必定。現に50半ばを超えたいまだにその沼に首まではまっているわけで。
そんなライブ直前に買ったこのレコードは何度も聴き続けていることもあって、いまでは忘れられない1枚とになって今でも当時のLPレコードをターンテーブルに乗せる機会が多い。
映像もここではできるだけ当時の映像をピックアップしてみた。
その後も彼らは何十年と変わらないサウンドをプレイし続けてきた、偉大なる金太郎飴バンドなのである。
だが、2014年に兄マルコムが認知症闘病によりバンドを抜けて引退することを知り、そのわずか3年後に64歳という早すぎる訃報に触れたときはあまりにも衝撃的だった。彼のリズムギターがないAC/DCは考えられず、まさにAC/DCサウンドの要であったからで、そのマルコムの早すぎる死は長い歴史を誇ったこのモンスターバンドの終焉を意味することを誰もが知っていたからだ。
その後、バンドは2014年にアンガス兄弟の甥にあたるスティーヴィー・ヤング(Steive Yound)をサイドギターに加えマルコムがいない初めてのアルバム『Rock or Bust』を制作。2016年のアルバムツアー途中にはブライアンが聴力障害によりツアーを一時離脱して Guns’N’Roses のアクセル・ローズがその代役が務めるなど話題にもなっていた。
そして2023年の現在もメンバーチェンジを繰り返しながら活動を続けている。兄を失ったいまでもアンガス・ヤングはそれこそ死ぬまでギター小僧であり続けるのだろう。それもまたこのバンドにとって真理なのだ。
Origin : | Sydney, New South Wells, Australia |
Released : | 1981. 11. 20 |
Label : | Albert Productions, Atlantic Recording Corp. |
Producer : | Robert John “Mutt” Lange |
Studio : | Family (Paris, France), H.I.S. (Paris France) |